ワールドブリューワーズチャンピオンによる抽出セミナー

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先日、ワタル株式会社主催コーヒー抽出セミナーに参加をしてきました。講師はアイルランドで行われた2016年ワールドブリューワーズチャンピオンシップにて優勝されたCofee Factryの粕谷氏。世界の競技会とはどんなものなのか、抽出技術や理論など実演も交えながらのセミナーでした。

【ワールドブリューワーズチャンピオンシップについて】

使用する豆や水、グラインダーなども指定されており、豆に関しては何の銘柄かも最後まで伝えられないとのこと!またブラインドでの味覚審査があった後に実技でプレゼンテーションをしながらの審査もあり、その際には身だしなみであるとか笑顔を意識しながらの審査となるそうです。これはお客様と対するのとまるで同じだということでした。そういった様々な状況下でいかに求められている味を表現できるかの勝負になるそうです。そして現在世界で求められているのはクリーンカップ、後味のキレイさとのことでした。フレーバーやアシディティが派手過ぎるといけないそうです。またその求められている味、世界のトレンドとなるものは常に変わるとのことでした。その表現したい味、求めらている味を出すための抽出方法があるのだと話されました。

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【抽出について】

用意された豆はパナマ・ゲイシャ。ワールドブリューワーズチャンピオンシップで求められている味は浅煎りでしか表現できないとのこと。それは日本の浅煎りよりもさらに浅くて、いかにロースト香つけないようにするか、焙煎にも苦心なされたそうです。使用する珈琲の挽きは粗め、これはキレイな後口にするために。またグラム数は20gで総湯量は300cc。そしてお湯の落とし方は一投目、二投目、三~四投目に分けて落とすとのこと。これは一投目、二投目、三投目のお湯が味に及ぼす役割が違うから。一投目のお湯を多くしたり少なくしたり、また二投目のお湯を多くしたり少なくしたりすることによって酸味が強くなったり、甘みが強くなるとのことです。三~四投目では濃度を調整する役割になるとのこと。

まずはペーパーをお湯でぬらし、一投目。結構ない勢いでお湯を投入。蒸らしなど無く定量のお湯をサーと落としていく。ドリッパーからはコーヒーがポタポタではなくスーと落ちてきている。二投目はそのコーヒーが落ち切ってから、また勢いよく投入。ここでの注意点はペーパーにかけないことのみ。またコーヒーが落ち切ってから三投目…。私が今までしてきた淹れ方とずいぶん違いました。お湯は置くように優しく淹れるや、蒸らしを行ったりコーヒーの層で土手を作ったり、お湯が落ち切る前に湯を注ぎ続けるなど・・・いずれも正反対。やはり質疑応答でその辺りの質問が多く出ておりました。そしてそれらにはちゃんと意味がありました。

まずペーパーをお湯で濡らすのには大きく味に影響を及ばすものではないが、ワールドブリューワーズチャンピオンシップではそういうところもキチンとしているか、プレゼン時にはチェックされるからだそうです。また蒸らしがなくお湯を勢いよく淹れるのは、粉を暴れさせるためにしているとのこと。お湯の勢いで粉がグルグル回り段々と粗い粉が上に、細かい粉が下の層になり浅煎りのコーヒーでもしっかりと味が出るためだそうです。

【今回の学び】

要はこの抽出方法はワールドブリューワーズチャンピオンシップで求められている現在の世界基準となる味、その味を出すための抽出で、全てのコーヒーに共通する抽出方法ではないということです。日本で好まれる深煎りのコーヒーでこの抽出方法をすると濃くなりすぎるとのことでした。また今美味しいとされているコーヒーが数年後も同じ評価かといえば決してそうではなく、抽出方法もそれにより変化するとのこと。そう思うと抽出方法による正解などはないのかもしれません。そして淹れるお湯の量と粉の量、水に対してのコーヒーが溶け込んでいる割合、抽出時間、それらを数値化して誰にでも淹れられることが大事とも話されていました。そうして作り出されたコーヒーは他者に対してポジティブな影響を与えるものでないといけない。そして日本でのコーヒーばかりではなく、世界で求められている味を知ることが日本のコーヒーにとっても世界と肩を並べ成長していくことになる、と話されていました。

今回初めて聞くような話もたくさんあり、このような機会をいただきアジア初の世界チャンピオンのコーヒーを目の当たりに出来たことはとても良い経験でした。お世話になった主催のワタル株式会社の皆さま、本当にありがとうございました。必ず今後の活動に役立てていきます。